オウム返しの法則

じぶんで特許申請するなら問題でないですが…、特許申請を弁理士に代理して行ってもらう場合、弁理士がじぶんのはつめいをきちんと理解しているかどうか…は、大変に気になるところです。

でも、これを確認するのは難しい。例えば、特許打合せでは、発明者の方が一方的にはつめいを説明する、というパターンがほとんどです。また、弁理士さんの人柄にも寄るのですが…、一般的に、説明終了後に、弁理士さんに「理解しましたか?」などと尋ねるのは、敷居が高く、なかなか言えない…。しかし、もし弁理士さんがはつめいを正確に理解していなかったら、当然に良い明細書を期待することはできないし、後々、トラブルになることも考えられます。

そこで、差しさわりなく、相手又はじぶんの理解度を確認する方法として、オウム返しの法則を採用してみる…のもひとつの手です。はつめいを説明する発明者側の視点と、はつめいを理解する弁理士側の視点から述べたいと思います。

【発明者側の視点】
発明者側の目的としては、はつめいを正確に理解してもらうこと…にあります。通常は、弁理士さんから「はつめいを説明してください…」など、なんらかの開始の言葉がありますので、まずは「分かりました! はつめい(のポイント)を説明します。」とオウム返しします。

これ! 意外と重要です。何も言わず、単に説明を開始すると、じぶんでも何を説明しているのか…分からなくなること、すなわち、はなしが本質からずれて、お互い何がはつめいだか、分からなくなること、が多々あるんです。

あと、ボールをもっている時間、すなわち、じぶんが説明している時間を長くしない。
さきほど、弁理士さんからの「はつめいを説明してください…」に対して、「はい! はつめい(のポイント)を説明するのですね…」としたのは、はつめいを一から説明すると、はなしが長くなり、会話のキャッチボールができなくなるので、あえて「ポイントのみ」を説明するかたちとし、短く説明するようにしたんです。

この場合、発明者の説明が終わると、弁理士さんから必ず次の質問又は言葉がかかるので、再び、オウム返しの法則で、同じように説明すれば、あなた(発明者)の目的をたぶん確実に達成できます。

一点、確認も含めて注意点です。
たまに弁理士さんから「従来技術、その問題点、及び本発明を順次、説明してください…」といったようなお声がかかる場合もあります。そのような場合は、そのまますべてをオーム返しするのではなく、本来の主旨に鑑み、例えば、「はい! まずは従来技術から説明しますね」といった具合に、最初の部分だけをオーム返ししてください。そして、その説明が終わったら「質問はありますか?」といった具合に、会話のキャッチボールが進むようにしてください。

【弁理士の視点】
弁理士側の目的としては、はつめいを理解すること…にあります。通常は、うえで述べたように、弁理士さんから「はつめいを説明してください…」などと、はなしを切り出します。発明者は、これを受けて、はつめいの説明を開始します。

ここでポイントです!
はつめいを理解する弁理士側としては、発明者のはなしをずっと聞き入らないこと…。弁理士さんのなかには、とめどもなく…発明者のはなしだけを聞き続けるひともいますが、それでは、はつめいを十分に理解できないし、発明者側からも、このひと…はつめいを本当に理解しているのかな?…と不安を助長させることになるからです。

すなわち、このようにならないために、弁理士側としては…、発明者のはなしには、必ず区切りがあるので、その時点で、もし、説明を理解し、特に質問がなかったとしても、確認の意味で、発明者が説明した言葉をそのまま利用して、オウム返しの法則で「〇〇は〇〇ということ ですね…」と言葉を発してください。

この時、発明者側からは、「その通りです…」とか、「いえ違います…××です…」とか、返答があるので、会話のキャッチボールが進み、はつめいを確実に理解することが可能になるからです。

なお、最近の傾向として、特に若い弁理士さんのなかには、打合せの開始に当たり「会話を録音させてもらってもよいですか?」とボイスレコーダーを取り出すひとが多くなりました。これを否定するつもりはありませんが、注意してほしいのは、ボイスレコーダーに頼り切りになると、実際の打合せで、本当に聞きたいことが聞けなくなる、ということです。

打合せは、常に緊張感をもって望むことが重要です。 

以上、説明しましたように、オウム返しの法則は、発明者側が一方的にはなしを進めることを防ぎ、会話のキャッチボールにより、短い説明と都度の確認を繰り返すことで、はつめいを確実に理解させる・する…といった意味で、非常に重要です。